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暗渠ハンター<脱構築版> 南千住にある乗客のいない駅と、行先を失った短い堀の話。

【前口上】
かつて取り上げた場所も、語り口やスタイル次第でリサイクルできるのでは? と思ったわけでもないですが、他所で「暗渠なんて殆ど興味ない人たちに向けて暗渠や川跡のことを書いてみたらどんな反応が来るか」という実験のために書いた文章を、暗渠ハンターの夏休み特別企画として、不連続で載せていくことにします。

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暗渠という言葉は以前から知ってはいたが、
今のように暗渠に夢中になったのは、
「自分の心の中にある暗渠」に気がついてからだった。
まあそんな戯れ言は横に置いておいても、
暗渠を探ることは都内に張り巡らされた「もうひとつのネットワーク」を見つけて歩くパズルのような面白さがある。
幹線道路のネットワークや都内の鉄道路線図などは誰もが十分に見慣れているネットワークであろう。
「千歳烏山と新宿が道路と線路でつながっている」という事は都...内の方なら誰もが知っていると思う。
しかしそんな常識的なネットワーク以外にも「千歳烏山と武蔵小山が品川用水という水路でつながっている」といった、
かつての川や用水のネットワークが未だ厳然と存在しており、
そしてそのルートの殆どは地下に埋められ、
自然流下式の下水道幹線として新たな用途を持って私たちの暮らしに直結している。
これは私にとって十分に刺激的な事実だった。

暗渠さがしを「パズル」に例えたが別な言い方をすればそれは、
東京という変化に富む街から誰にともなく発せられる呑気な「QUESTION AWARD」でもある。
たまたまひょんなことからやる気を抱いてしまった私は、
それに応えようと現地で手掛かり(地形や水の痕跡)を探し、
またそれぞれの地域図書館で歴史資料や土木資料を探しながら
その見えなくなってしまったネットワークをつなげ記憶に残そうとしている。

同じような「見えないネットワークを可視化する」感覚は、
一見でたらめに建てられたような高圧線鉄塔を中継地点としながら、
おそらく電力供給上都内の重要な拠点を結んでいる高圧線のルートを辿る時や、
我々の日常とは殆ど接点のないまま運行されているJR貨物線の路線図を地図上で見つけた時にも感じることができる。
特に湘南新宿ラインや京葉線が実は元の貨物線ルートを転用した旅客線だった、
と知った時は少なからずときめいたものだ。

さて、そんな「ふつうあまり接点がない」駅、隅田川貨物ターミナル駅という駅が南千住にある。
ここは通勤通学客とは無縁の駅で、当然「乗客」はいない。
しかしいまも都内と地方を結ぶコンテナ輸送ネットワークの拠点として機能し続けている。
とはいえ、京葉線のようにいくつかの貨物線が旅客線に転用されるほどであるから、
当然鉄道貨物の需要自体は長期的には減少傾向にある。
戦後の高度成長期までは国内の輸送需要はぐんぐん伸び、
これに対応するため本格的な貨物ネットワーク構築や貨物基地建設に多大な投資がなされた。
しかし皮肉なことにそのインフラが完成するころにはモータリゼーションの進展に追い抜かれ、
輸送需要の多くはクルマにかっさらわれてしまう…。

モータリゼーションの嵐が吹く以前には、
貨物ネットワークは水運、つまり水路とも深く結びついていた。
隅田川とこの貨物ターミナル駅は輸送船の出入りできる堀でつながっていたが、
現在その堀は荒川区立瑞光橋公園(写真)として一部の痕跡を留めているに過ぎない。

Photo_2

元記事はこちら 

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コメント

そうなんですよね。鉄道と川の接点に貨物駅がある。
私、両国という駅は、総武線が隅田川を越えるのが大変だったから手前にターミナルを作ったんだと思っていましたが、貨物ターミナルを隅田川に横付けするためだったんだとこないだ初めて気づきました。ならば東武線が隅田川を越える前にある業平橋駅もやはり貨物ターミナルで、それが不要になったために東京スカイツリーとして有効利用されたんだなあ、なんて、いろいろつながって面白いテーマですね。

投稿: 大石俊六 | 2012年7月22日 (日) 19時52分

なるほど、両国、隅田川のすぐそばですもんね!
東武もスカイツリー前は鉄道用地でしたよね、そっか。
小名木川に塩浜…
大きな川(とか運河)べりに鉄道基地!なるほどー。

投稿: lotus62 | 2012年7月24日 (火) 08時56分

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