暗渠ハンター 東長崎付近から葛が谷分水を辿る
新宿区神田川崖線イッキ責めの最終回です。
今回は崖線というわけではないんですが、その延長線上の
「葛が谷分水」と呼ばれる千川上水の分水を扱います。
まあ最上流は確かに人工の用水からの分水なんですが、途中は何箇所か付近の湧水を集めて葛が谷という地域を流れたかつての農業用水です。
6 葛が谷分水
まずは上流、千川上水のあった千川通りから。
江古田方面から中野通りへ向かう道。
これが中野通りにぶつかるところで千川上水はかくんと90度左に曲がって北進するのですが、葛が谷上水はこの曲がり角を曲がらすにまっすぐ清戸道という通りを進んで始まります。
そして、かつての牧場・籾山牧場を突っ切ってさらに目白通りを越えていきます。
籾山牧場は、長崎地域に3つあった牧場のうちのひとつ(他は足立牧場、安達牧場とどっちもなぜかアダチ)。大正時代でその役割を終え、昭和の初めに「籾山分譲地」として売り出されました。当時の籾山分譲地のパンフレット表紙には富士山がみえる眺望の良さ、がイラスト入りでアピールされています。(「長崎村物語」96年9月 豊島区郷土資料館 より)
いまはその一角には大きな公園や
さて目白通りを越えるとこんな水路になって(左が目白通り、右が葛が谷分水)、
写真奥の左カーブのあたりが水車跡。名倉水車という水車です。
この分水は冬には通水しなかったらしく、あまり規模も大きな水車ではありません。
大正時代は絹糸を撚るのにこの水車を利用していましたが、昭和に入るころには水車は廃業となってしまったようです(「ふるさとは西落合 三」03年3月 西落合まちづくりの会 より)
別の資料(「ふるさとは西落合」01年3月 西落合まちづくりの会 昭和5年生まれの加藤清氏へのインタビュー)でも、昭和12~3年ごろの情景としてここを「水のない川(溝のようなもの)があった」との記述があります。
少し下ったところで、北からの湧水を合わせます。
それがここ。城田医院があるところ。
写真奥から湧水の流れがあり、この付近に弁天池という池があったとのことです。
前出の「ふるさとは西落合」01年3月 昭和5年生まれの加藤清氏へのインタビューでは、
…そこに清水の池があって、きれいな水がぼこぼこわいていた。三十センチぐらいの深さ、ものすごくきれいな水で、底が全部見えて、どういうわけか白い砂のようなものが敷いてあったのをおぼえている。入ってはいけないことになっていたが、私たちはこっそり入って遊んだ。
きれいだったんですねえ。それにしても白い砂とは??
もうひとつの前出の資料「ふるさとは西落合 三」03年3月 内の~「セピア色した千川上水分水(昭和30年ごろ)」岡本和代 によると、
…江戸以前から清水が湧き出て池となり、中州には「弁財天」の祠が祀られていた。「雨乞いの儀式」には村中総出で、池の底まで掃除して神事を行った。
とあります。
なるほど、きっと普段は人を入れない禁忌の「神聖な儀式の場」としての存在で、いざ神事となれば池の底まできっちり手入れし、その際のハレの場の演出としてわざわざ白砂を敷いていたのかもしれませんね。
さてこの交差点から、向かいにあるコンビニの横を抜けていきます。いまだ砂利道ですね。
この先で葛が谷分水本流と合流しまずが、反対の右岸(南側)からもちいさな湧水が合わさっていたようです。この一角がその場所らしいんですが、もうすっかりわからなくなっています。
これは右岸の家並み。ちょっと下高台に家が並んでいて、葛が谷分水が谷底を流れているのがわかります。
このへんはじくじくと水がわいていたそうです。
ここだけでなくこの流域は多くの箇所に湧水や沼があったと「ふるさとは西落合」での加藤清氏へのインタビューに書かれています。
新青梅街道を越えるところには石橋があったらしいのですが、もう跡かたもありません。
暗渠上の物置も、あったあった!
ですが味のある暗渠区間はあまり長くはありません。
以降ほとんどはこんなまっすぐな道に紛れてしまいます。
このあたりにはこんな表示板が数か所に設置されてあり、これによると大正14年から昭和11年にかけて耕地整理がされたとのこと。
なんどかかくっとまがって、妙正寺川までもう少しのところ、目白大学のあたりでくねくねっとなってきます。
目白大学の敷地は山の上。ここを避けるように葛が谷分水は妙正寺川へと向かいます。
合流地点にはどんぴしゃで足元に四角い合流口が開いていました。
下落合付近の崖線を中心にしたシリーズはここまで。
いやー東長崎とか初めて足を踏み入れましたよw
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