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暗渠ハンター となりあうマリア様と不動さま

新宿区神田川崖線イッキ責めの3回目です。
今回は聖母病院の谷と、筆が続けばその西の不動谷まで目指します。
地形図はこちらを参照ください。

4 聖母病院の谷

聖母病院は昭和の初めにこの地にできた病院。
これの歴史なんかにも若干触れておこうと思ったんですが、
前回ご紹介した落合道人さんのブログにとっても詳しく書かれているのを拝見して、
断念しましたw
どうぞ落合道人さんのページをご覧になってください。
落合道人さん、毎回どうもありがとうございます。

地形図で見るとこの谷は逆三角にスプーンで掬ったようにぽこっと窪みができています。西半分は病院建設の時に削ったもののようですが、東半分はもともと諏訪谷と呼ばれる谷だったようです。その諏訪谷に関するこんな記述があります。

「おちあい見聞録」(コミュニティおちあいあれこれ)より
…聖母病院の東側は、諏訪谷と言って、その谷に湧水が流れ落ちていた。その下に10m四方ぐらいのコンクリート造りの溜池があった。近所の農家の野菜の洗い場であった。夏、子供たちの水遊び場でもあり、湧き水なので水温が低く、唇を紫色にして、震えながら泳いだ。
ふふふ、紫色の唇。私も子供のころを思い出しました。そういやここんとこしばらく唇を紫色にして寒がっている人って、見たことないなあ…。

また前回も引用させていただいた「新宿あちあい-歩く・見る・知る-」(新宿あちあい-歩く・見る・知る-編集委員会)から長谷川真之丞さんの寄稿にも洗い場の記述が出てきます。
…聖母坂を目白通りに向かって上ると右手裏(現在のコンビニストアと調剤薬局)に「洗い場」(現在でも少しですが清水が湧いている)といってコンクリート造りのしっぱな貯水池があって、そこには冷たくて美味しい清水が音を立てて湧いて洗い場に注いでおり、バケツにあっという間にいっぱいになりました。
この資料には、コンクリート製の洗い場のイラストも載っておりそこには昭和10年ごろ、と書かれています。また別なページにはこの谷の出口の方にあった徳川男爵家の静観園という庭やそのそばにあった釣堀のこと、その他この一帯にあった沼のことにもちょっとだけ触れている箇所があります。本当に水の豊かな土地だったようです。

さてではいよいよ現地の様子を。
まずは坂の上からの眺め。
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信号の向こうがどーんと落ち込んでいるのが解りますでしょうか。
この通りが聖母坂です。
ちょっと裏手、東の諏訪谷のほうに入ってみましょう。
谷の上の細道から谷底の道を眺めます。
Imgp5754

谷底の、二階建ての家より高いところにある道。

谷底に通じる道を下りていきましょう。
これはその降りっぱなで、来た道を振り返って撮ったもの。
Imgp5757

谷底の路地はしっとりした雰囲気でした。
Imgp5759

たぶん件の洗い場とは、ここなんではないかと思います。
エッジの効いた崖と、ぽっかり空いた駐車場。
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湧水の名残までは確認できませんでしたが。

すぐ近所にはアートっぽい染物屋さんもありました。
Imgp5764

もうすこし下ると、たぶん洗い場と妙正寺川を結んでいたんだろうと思われる暗渠指数の高い道も見ることができます。
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ちょっと残念ながら確証はないんですが…。

この先でさっきの聖母坂の通りに出ていきます。
Imgp5770

聖母坂の左右には大きな病院や近代的な関連施設が並び、昔の沼や釣堀を想像するのも難しいです。谷一帯ではさっきの洗い場付近が、辛うじて昔の姿を偲ぶことができるエリアでした。

5 不動谷

つぎは、さらに西に移動して不動谷に。環7の西にある谷頭(一級スリバチ)に発し、環7を越えて東南に流れていく川があったようです。まあ便宜上これは「妙正寺川不動谷支流(仮)」と呼ばせていただきます。

「おちあい見聞録」(コミュニティおちあいあれこれ)によると、
…一番奥は中落合3-17付近にあった。~中略~谷へ下りていくと、小道があった。この小道を下りると、小さい池があり、その辺に弁天様(今は移動し、厳島神社という)があり、その付近にこんこんと水が湧いていて、農家の方はここで大根やごぼうを洗って出荷していた。夏には子供のよい水遊び場だった。この水は小川となって、その谷の西側斜面の杉林の下を流れて、不動園という箱根土地(株)の庭園に入り、庭園内の湧水も加わり、季節には水蓮の花が咲く池になっていた。
おお。水蓮まで。
ところでこの箱根土地は結構川の歴史を調べていると出くわす会社です。井の頭線池ノ上の南、北沢川溝が谷支流の付近にも箱根土地による清風園という分譲地がありました。鍋島松濤公園一帯も確か箱根土地によって一度買収されているはず。西武グループで有名な堤さんの会社ですね。桃園川の源流とされる天沼弁天池といい、川を調べているといろんなところで堤さんに出くわします。あ、そういえば「堤防」の「堤」ですね…。関係ないかw

では現地に飛んでみましょう。

まずは、もともと谷頭にあった弁天様。谷のすぐ南に厳島神社として移動されていました。
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ちいさな境内には、シンボリックに池も造られています。
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そして谷頭にまわります。この写真の右裏が谷頭です。
Imgp5700

谷頭から下流を望みます。
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まさに谷のはじまり。

一級スリバチはこのすぐ奥に出現します。
まずは今降りてきた道を振り返ります。
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そして正面は階段。
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右側も、階段。
Imgp5705

左側も階段です。
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古い地図の記載によると、おそらくこのスリバチからの南側の高台を含む一帯が不動園、のようです。
おそらくこのスリバチが洗い場で、ここに南斜面からも湧水が流れ込んでいたのだと思います。

そして、スリバチの少し下流、環7の手前にも池があったようです。ここらへんのはず。
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もう防火水槽の標識以外、水の匂いはしてきませんね。

さあ山手通りを渡って下流を辿りましょう。
山手通りのすぐ東側の川跡は、はじまりがすでに住宅となっているようでよくわかりません。
この行き止まりの道の奥から暗渠らしい道が確認できます。
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ちなみにこれは暗渠ではありませんが、近辺の路地はいい雰囲気です。
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下流に向かって辿ります。
いったん広い道になりますが、
Imgp5721

その先で再び(元)水路が現れてきます。
Imgp5722_2

その先はまた暗渠らしく細く細く。
Imgp5725

あ、パイプが壁に埋まってたw
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まもなく新目白通りにぶつかります。
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いま通ってきた暗渠を新目白通りから見たところ。
あたりまえですが、ずいぶんと高低差がありますね。
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通りを渡った先には藍染やさんが。
Imgp5734

ここから妙正寺川はすぐそこ。
でも、付近には暗渠サインともいえるタクシー会社の駐車場があったり、
Imgp5743

思わぬ方向に伸びる暗渠があったりで、
Imgp5745

流路が特定できません。
もしかするとこの合流地点付近は複数の用水路が錯綜していたのかもしれません。

迷いは多いのですが、今は素直に一番大きな通りの下に下水として付け替えれれているようです。
その証拠となる合流口です。
Imgp5751

そして、合流後の妙正寺川。
Imgp5752

さていよいよ次回でこのシリーズの最終回、千川上水の分水を受けて葛が谷を流れ妙正寺に注ぐ水路をご紹介します。

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2055 ・・・神田川水系」カテゴリの記事

コメント

不動谷支流(仮)の環七(じゃなくて山手通りですがw)を越えたところは、突き当たりが物置きでしたよね?
この物置きで通せんぼされているのが見所みたいに思ってましたが・・・。

あと、私事につなげてしまいますが、下記の拙ブログの20枚目の写真(「奥の小学校の位置が高い!」の文面の写真)がこの不動谷支流(仮)だったのですね。
http://ankyoneko.exblog.jp/14345402/
ですので、ここの谷っぷりもなかなか見事です。

投稿: 猫またぎ | 2012年3月28日 (水) 13時26分

うわー、アホなのと土地勘ないのと注意力散漫なのがバレバレですね、すぐさま修正しました山手通りw 優しさに溢れるご指摘どうもありがとうございます。
はい、手持ちの写真を見返すと確かに物置ですw なんか、物置の前に門のようなものがあったので私有地かと思っちゃいましたw
そ、それと私事も大歓迎ですよw
ほんとだここですねー!!!
そのあとの写真も、今回の不動園の一級スリバチですね。
そっかこの記事を拝見していた頃は全くこのエリアに入ったことがなかったものですから記憶から飛んでおりました。まさにこのへんは猫またぎさん好みの谷地ですものねー。

投稿: lotus62 | 2012年3月28日 (水) 17時09分

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