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暗渠ハンター 林泉園にあった幻の池と血洗いの池。

数回にわたって、新宿区神田川崖線イッキ責めというのを書いていこうかと思います。
こんなやつ。

Photo_3

厳密にいうと1の血洗いの池は豊島区なんですけどね、ギリで。
さらに厳密にいうと、下落合よか西は神田川というより妙正寺川なんですけどね。

この一帯は神田川沿いでも特に厳しい勾配を持った崖地帯。
どうも東京の川は川の南側よりも北側の方が急峻な崖になっていますが、
その理由に関しては地殻変動説や「北側の岸は日が当たるので霜柱が融けて地盤がぐじゅぐじゅになって浸食されやすい」説など、諸説ある模様。詳しくは貝塚爽平氏「東京の自然史」に載っていますのでご参照のほど。

こんな素敵な崖なんだから、支流をなす暗渠があるに違いない。
暗渠がなくても湧水や池なんかが見られるだけで幸せだろう、と出かけて行ったわけです。
結論から言うと、暗渠が見つからなかったところもあります。
それじゃ「暗渠ハンター」というタイトルはどうなんだ、
という向きもありましょうが、まあここは大目に見てくださいw

まず今回は1の血洗いの池と2の林泉園を取り上げます。

1 血洗いの池

血洗いの池とは恐ろしそうな名前ですが、
ここは学習院大の構内にある池。wikiによると
「元は湧水でできた用水池で、江戸時代には灌漑に使われており、水門・水路があった。」とのことです。
名前の由来は、いろんなところに
「堀部安兵衛が仇討で血が付いちゃった刀を洗った」とありますが、これもwikiによると学習院で伝わる後付けのお話だそうです。

構内を入り池までの道は、まるで山の中。
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敷地の南端がぽこっとスリバチ状になっていて、
そこに水を湛えています。
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池は想像以上に大きくて、静か。
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敷地の外はもうすぐそこが神田川です。
ここから流れ出しているのかな。
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この先神田川方面には流れの痕跡はありませんでした。
ぐるっと池の周りを巡ってみます。

あ、思わぬところに猫がいた!
ということで、下の写真のどこかに猫が写っています。
さて、どこでしょうw!? 答えはさいごに。
(ってやるつもりで撮ったんですが、見返してみるとこりゃわかんないっすよね、小さすぎてw)
Imgp5519

この辺りが地形的にも造り的にも湧水源っぽいですが、
Imgp5520

確証は得られませんでした。
いくつかの資料をあたっても「元湧水」という表現が多く、
すでに枯れてしまっているのかもしれません…。

このスリバチの上の方には、のり巻きみたいな土管。
ここから池に水が落とされているようです。
生活排水なわけがないですよね…。たぶん学内の雨水が集められているのではないかと思います。
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またまたwikiりますが、こんなことが書かれていました。
「血洗いの池」は魚類やザリガニ・水生昆虫・水生植物等を保護するため自然のままに任せていたが、湧水の枯渇と雨水泥水流入等による水質汚濁や、護岸の崩れ等による周辺環境の悪化を改善するため、2001年に池の浚渫・護岸の整備・水質浄化装置の設置・植栽改善・電灯設置・木製八つ橋の架橋など整備工事が行われた。(以上引用)

なるほど、やはりすでに湧水ではなくなっているのですね…。

2 林泉園

さてここからは、山手線の外側に移動。
林泉園の池跡に向かいます。
ここは、血洗いの池に行く道すがら東京時層地図をみていて偶然付近に見つけたものです。
そしてどうやら今でも、水はなくともその跡がぽこんと窪んで残っているようなのです。
そこが昔「林泉園」と呼ばれていたことは、後になって知りました。
そうそう、家に帰ってここを調べていたら
どうも東京スリバチ学会さんのFWでも訪れていたようですね。
「一級スリバチ(四方が高所に囲まれる窪地)」として取り上げられていました。

それは目白通りの尾根筋から神田川・妙正寺川の作る谷に向かう斜面にあります。
そこに、目白通り側からアプローチ。
ここが、林泉園を囲むへりの道。
Imgp5526_2

写真左手ががくんと窪んでいます。
その窪み・スリバチの底に降りてみたいのですが、
そこには集合住宅が建っており中に入るのはいささか憚られます。
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どこか降りる道はないかとへりの道を通って谷頭方面を目指します。
おお!あった!!
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見事な落差の階段がスリバチの底まで延びてます。
降りてみましょう。

底には短い道があり、すぐ向こう側にあるヘリにクランク状に繋がっています。
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ちょっと暗渠の匂いのする道の造りですね。
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これが向こう(南)側の階段。
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登ったところでも、暗渠的な香りのする道がありました。

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というわけで来た時と反対側のへりに出ましたが、谷頭であるさらに奥の方に向かいます。
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お、だんだん底との段差が縮んできました。

どうやらこの原っぱというか駐車場というか曖昧なところが谷頭地点のようです。
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なんか意外とあっさりしてるなーという印象。

しかしさらにその奥には、これまた暗渠指数の高めな路地が続いていました。
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迷わず入ってみます。
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果たしてここを林泉園に注ぐ源流が流れていたのかどうか…微妙です。
すぐに大きな道に出てしまいます。
Imgp5542

さてここで。
いったい林泉園とは何なのでしょう?
帰りに寄った新宿区の中央図書館で資料を漁ると、いくつか林泉園に関わる記述を見つけることができました。

まずは「新宿あちあい-歩く・見る・知る-」(新宿あちあい-歩く・見る・知る-編集委員会)から長谷川真之丞さんの寄稿より。
…近衛邸と相馬邸(lotus注:おとめ山公園を含土地はかつて相馬さんという方の、そしてその北から目白通りまでのところは近衛さんという方のおうちでした)の間には、谷間になった低い土地に相馬邸の一部と言われている林泉園があり、立派な庭園で清水が湧いてうっそうと緑に囲まれた池に流れ込んで、そこには子供たちが入ることができました。皆で遊びに行って大きな蜂の巣を見つけ棒で突いて蜂に追われ刺されて痛い目にあい、水で冷やし泣き泣き家に帰り、学校を一日休んだことがあり今でも忘れられません。又、テニスコートなど二箇所ありこの時代はお金持ちの偉い人がゴルフやテニスをするものと小さい時から思っていたのでやはりお金持ちの屋敷だったのかなーと思いました。

林泉園は湧水のある庭園だった、付近にはテニスコートもあったというわけですね。

「私たちの下落合」(落合の昔を語る集い 下落合二丁目の高田蔦枝さんの記述)から。
…川の一番上流は(lotus注:おとめ山公園の池に注ぐ川のこと)、北側の道路の下に大きな土管が埋まっていて、その先は道路の北側にある林泉園の谷に繋がっていました。~中略~さらに昭和26~27年には、我が家に接する相馬さんの谷が埋められたのです。地下鉄丸の内線の工事が始まり、それを掘るときに出た土で埋めることになったのでした。~中略~相馬さんの谷の上流にある林泉園の谷も解放されて、やがて家やアパートが建ち、戦前の下落合の谷や森はすっかり姿を消してしまいました。

林泉園とおとめ山公園の池は土管で繋がっていた、とのことです。その後付近の谷を埋めて再開発がおこなわれ、昭和20年代後半には林泉園も宅地として造成され切り売りされて言ったようです。

また「落合の歴史」からはこんな記述が。
…下落合の中でも当時特級地は目白駅近くの丸山林泉園一帯であろう。~中略~武家屋敷、築地塀を囲らせた相馬邸、その前が電力王の松永邸、周辺には東京電灯の二階建社宅がズラリと並んで建っていた。樹木鬱蒼と繁り、昼なお暗しというにふさわしい一角、全く閑静な地区で、近衛家の別邸、元外相の故有田邸、その他有名会社の社長級が軒を並べていた。
なるほど。野趣あふれる中にも格調の高い高級住宅地だったようですね。

webでも調べてみましたが、
林泉園だけでなくこの辺り一帯のことがとても詳しく書かれてあるブログを発見。
落合道人さんという方の落合一帯を扱うブログで、林泉園のこともイラスト入りで構成されています。
ここは秀逸!そのほかのページもすごくおもしろい!!
落合さんリンクの快諾、どうもありがとうございました!

さて、先ほど引用した記述にもある通り、
この林泉園の池の流れは坂を下ったところにある「おとめ山公園」の池に繋がっています。
もういちど現場の話に戻って、その「繋がり」を探してみます。
当然すでに流れは見ないのですが、林泉園から下流の方向にこんな道が横切っています。
Imgp5544

この道のまんなかへん、窪んでいるところがあり、流れはそこを左右に横切っていたようです。
その窪みに立って左右を確認。
上流方向はこれ。
Imgp5545

すぐに行き止まりになってしまう道なのですが、その不自然さが十分に怪しい。

そして下流方向は。
Imgp5546

この真ん中左寄りのあたりが怪しいです。
道はありませんが、当然この先をまっすぐ伸ばしていくとおとめ山公園の池にぶち当たります。
ここに先の引用の「大きな土管」が埋まっていたのでしょうか。
そして付近は丸ノ内線の工事で出た土で埋められたのでしょうか…。
この先をコの字ウォークで辿ってみましょう。
やや窪んだところに団地。暗渠サインの一つですね。
Imgp5550

取り壊しにかかっているようで廃墟然としています。
掲げられた表示によると、この跡は隣接するおとめ山公園の拡張地になるようです。

さてこの先はいよいよおとめ山公園。
次回でご紹介します!

あ、そうそう、猫クイズの正解はこちらw

Photo_4

アップで。

2

ではでは。

より大きな地図で 杉並以北でまとめてみよう を表示

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コメント

血洗い池!
とぉっても気になる名前ですね~
ホントの由来はなんなんでしょうか?

いつもながらまるで自分も一緒にあるいているような気になる記事ですね!
とても参考になります!

追伸:
ねこクイズ、答えの画像みても難しいです。
そろそろ老眼鏡が必要かもしれません(笑)

投稿: microrelief | 2012年3月18日 (日) 23時23分

お褒めのお言葉、恐縮です;;;
そういえば、microreliefさんが食いついてくれそうなネーミングでしたね。ホントの由来、ちょっと宿題にさせてくださいw
猫クイズは老眼等のせいではなく、画像の粗さのせいです、だって私だって撮った写真を記事にするとき相当迷いましたからw失礼しましたww

投稿: lotus62 | 2012年3月19日 (月) 19時07分

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