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暗渠ハンター 小石川の「おあな」と南大塚の「藤橋」

朝から文京区春日で用事があって、それが思いのほか早く片付いたので、
ちょっと30分程度散歩して行こうかなあと小石川3丁目あたりをぶらっとしてきました。
この辺は東大下水や小石川やなんかもあってなかなかの贅沢エリアですが、
実はこんにゃくえんま前から西の一帯はメジャーな川もないし
殆ど行ったことがなかったし。
まあどんなことになっとるのかなあ、と。

歩きはじめてすぐに出会ったのがこの「2連井戸」。
しかも2つとも現役っぽいです。
Imgp3126

向きを変えてどうぞ。

Imgp3129 

暗渠や路地裏を歩くと結構井戸があるもんですが、
でもこんな「2連」は初めて出会いました。
この界隈は正しい路地が発達して(遺されていて?)いて
ちょっといい雰囲気です。
Imgp3130

路地を抜けゆるい坂を北の方、
だいたい播磨坂の方面に向かって歩きます。
しかしこのあたりはほとんど暗渠や排水路などは
見ることができませんでした。
気がつけば結構な高台に来ている模様。
道端の小さな公園から、
東に通る小石川の谷を望みます。
Imgp3133

ジグザグに(というか適当に)歩いて
いつの間にか播磨坂方向というよりも西の春日通り方向へ。

春日通りの尾根のあたりまでもうすぐかな、という地点に
ものすごい巨木。
Imgp3136

あとでご紹介する沢蔵司稲荷のキツネが宿る、椋の木だそうです。
うん、とても堂々として、風格のある木でした。

これがあるのが善光寺坂。
坂の麓、下のほうに善光寺というお寺さんがあるからでしょう。

この椋から下っていこうと歩き出すと…。
左手にあるのが沢蔵司稲荷(たくぞうすいなり)です。
Imgp3148

詳しくは公式HPでご覧いただきたいのですが、
なんでも「沢蔵司」さんというたいへん優秀なお坊さん
(浄土宗の奥義を3年でマスターしたくらい)にちなんだ由緒あるお稲荷さんだとのこと。
でもこの沢蔵司さんは本当は優秀な狐の化身だった、とのことです。

まあ寺社仏閣をテーマにするブログではないのでw
このへんは軽くさわるだけにします。
そういう姿勢ですから、まあそんなにこのお稲荷さんに期待はしていなかったのです。
もちろん境内に入るときは軽く会釈をし、失礼の無いよう例は尽くしますが。
高台だし、池や湧水なんかがあるといいなー的な。

そんな態度の不埒な私の目に飛び込んできたのは、これ。
大きなまんなかのお社の右に、石碑の案内板があったのです。
Imgp3137

え?「おあな」?さらに「霊窟」…。

さあここで期待と若干の不安が入り混じります。
「おあな」とはきっと「お穴」であろう。
ってことは洞窟?水湧いてないかな?
洞窟でなくても窪地っていう可能性もあるよな。水湧いてないかな?
そんな期待。
でも人っ気ないし、「右が参道」って書かれてても、
その先はかなり狭くて鬱蒼としています。
秋だというのに・都会の真ん中だというのに暗くて深い森の中に入っていくようです。
それに「霊窟」という文字の映像がどうも頭の中で
エコーを伴って怪しく鳴り響くかのようですw

夜中だったらもっと躊躇したでしょうが、まあ昼間だし。
行ってみることにしました。

石畳の狭い参道を降りていきます。
Imgp3138

ここだけものすごい窪地。
小さいながらも一級スリバチ地形(四方を覆われた文字通りの完璧擂鉢地形)です。

しかも蚊がたくさんいますw10月も終わりというのに…。
「おあな」は全体にたくさんの鳥居が掛けられ、
周辺には石仏やらなんやらありとあらゆるものがお祀りされている、
そういう雰囲気でした。
ある種「ワンダージャパン」を地で行くようなスポットです。

ここがメインのお社なのかな。
Imgp3139

おおおー!!!お社の脇には、すでに枯れてしまったと思われる池跡、です。
Imgp3140

振り返ると、逆サイにもう一つ池跡。
Imgp3141

なんと!
スリバチ底には二つも池跡が確認できました。
季節によってはここが水で満たされることもあるのでしょうか?

ちょっとここの独特な雰囲気に怯みながらも、
池があった場合の水の逃げ道を見渡してみますが…。
どうも見当たりません。
これだけの窪地ですから、
大雨が降った時もきっと水は溜まってしまうだろうし、
どこかに捌け口があるんでしょうが…。

この参道はこのメインのお社からさらに続いていて、
スリバチの向こう側にこのまま上ることができます。
途中まで上って振り返ります。
Imgp3142

反対側のスリバチの淵まで上がりました。
ちょっとできるだけスリバチ全景を写したいな…。
Imgp3143

この淵を通って石碑のあった入り口に戻ることができます。
その途中にあったのがこれ。
Imgp3144

スリバチの淵を水路が巡らされています。
なるほど、底にたまる前に淵の部分から水を回してスリバチ外に
排水する仕組みを取っているようですね…。

あ、ちなみにここ、オンラインでも参拝ができるようです
ご興味あるかたはぜひ。

さて石碑に戻ってもういちど入り口を眺めていると…。
うん…?
Imgp3145

石碑の後ろに、なぜか橋の親柱が!!
なぜこんなところに?
よく観ると「ふじばし」とひらがなで書いてあります?
こんなところで橋の遺構と出会うとは!

帰ってからざっくり調べてみると、
どうやら小石川(谷端川)の南大塚あたりに架かっていた「藤橋」の遺構のようです。

こちらの住職さんのブログにも、「ふじばし」関連のエントリーがありました。
(いちばん下のほう)

ここでは「経緯はわからぬが」としていますが、
大塚からこの辺りを担当した火消の「六番組」に関係がありそうと書かれています。

また、別のブログ「東京23区辞典」さんでは
大塚の「権太夫稲荷」の項目で、
(引用自由、とあったので感謝を込めつつ引用させていただきます)

南大塚1丁目60番、
大塚三業地の方へ行く道の山手線土手際に建っており、
地元商店街の人々に信仰されているお稲荷さんだ。
権太夫さんが誰かは判らないが、
権太夫稲荷は京都伏見稲荷にあり、商売繁盛の神様だという。
三業地の人々が勧請したのだろう。
ここは昔谷端川が流れていて大塚駅一帯は
低湿地で幾つもの湧水があった。
幕末の地図を見ると駅の北口側に藤橋という橋があり、
その際に小さな稲荷社がある。
これを線路敷設のために盛土した時に
現在地に動かしたのだろう。
江戸時代は殺風景なところだった。
最近の住宅地図に記載はないし、検索でも引っ掛からないので、移したのかもしれない。


と記述されています。
まさに、住職さんが書かれていることと一致…。
もしかしたらこの権太夫稲荷をこちらに合祀して、
その「形見」のようなものの一つとして藤橋の親柱も持ってきたのかも知れませんね…。

いまでも、小石川の流れで二つの空間が繋がれている。そんな気持ちになります。

沢蔵司稲荷を出て、坂を下って帰路につきます。
坂の途中にはこんなシンプルな聖地も。二次元か。
Imgp3150

妖しくもかわいらしい。

「おあな」が何者だかとても気になったし、
まだちょっとだけ時間があったので、
菊坂に向かって真砂町の図書館に向かってみました。
炭団坂を上る途中でみつけた崖を上下に這う土管。

Imgp3165
いつかろっちさんが、馬込の楓谷でレポートされていたもの
(「飛び出しすぎるマンホール」)と似てますね。

さあ、この坂登れば図書館!と勇んで入り口に立ちましたが、
月曜日は休館日でした…。
多いんですよね、月曜休館日の図書館って。

より大きな地図で 不忍池付近 を表示

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2055 ・・・神田川水系」カテゴリの記事

コメント

冒頭の井戸お写真、拡大して拝見しました(*^-^)
彼等の「最近どお?」「ぼちぼちでんな~」的な会話が聞こえてきそうです。

「お穴」も行った事無いんですが、都会の不思議な扉ですね・・・
1人で行くと波長次第で奇妙なモノと遭遇していまいそう。
最近そちら方面への用事が多いので、近々見てみたいと思います。銅御殿と合わせて。
あ、でも蚊が多いのですね(;д;)

洞窟関連では、大船の田谷の洞窟(ろうそく持って入る)や玉川大師が気に入ってます(*^.^*)


投稿: 谷戸ラブ | 2011年11月 1日 (火) 11時09分

谷戸ラブさん
>「最近どお?」「ぼちぼちでんな~」的な会話
いつもブログ拝見してて思うんですが、谷戸ラブさんってほんっとに想像力の豊かな方なんですねw
改めて2連井戸の写真見て笑っちゃいましたーww。
「おあな」は、私もこの時まで存在さえ知りませんでした。
ツイッター上でここに行ったことがある方からレス頂きましたが、
やっぱ結構「身の毛のよだつ」スポットである、とおっしゃっていました。
蚊よりもこちらにお気をつけて、十分健やかなときに行かれることをお勧めします。
大船の洞窟は以前から行ってみたいリストには入れておいたんですが、 玉川大師はノーチェックでした。ここもなんかアレなスポットのようですねー;;;。

投稿: lotus62 | 2011年11月 1日 (火) 17時35分

2連井戸、いいですね〜。そして「おあな」行ってみたいです。
東京地形地図で見るとちょうど小石川の谷の崖線に位置してるんですね。
ふじばしの親柱、初めて知りました。
まだまだしらないことがたくさんあるなあ。。。

投稿: HONDA | 2011年11月 2日 (水) 23時46分

私スリバチには詳しくないんですけど、今回の記事じーっと見てなんとなく思ったのは、
・お社の周りはまるで溶岩が集積したのを模したような感じがする。
・スリバチ=火口?
・池跡=カルデラ湖?
・藤橋=富士橋?
・おあな=風穴?

さっき阿蘇山の絵葉書見てたんで、こじつけでそう思っただけなんですが、これはぜひ行ってみたいです。

投稿: 俊六 | 2011年11月 3日 (木) 16時38分

>HONDAさん
違う興味から「おあな」に入ってみたんですが、まさか親柱に出会えるとは思いませんでしたw 不思議なご縁をお稲荷様に頂いたような気がします。

>俊六さん
(ぱんっと膝を打ちながら)なるほど!!
なんか諸星大二郎の漫画(<大好き)に使われそうな面白い(<というかマジそれありかも的な)アナロジーですねー。おあなの内部は確かに富士塚に見られるような、溶岩っぽい岩を思いっきり配しています。おあな全体が富士の暗喩ならばここに「ふじばし」を持ってきたのも必然性が出てきますね。
当時の周囲の人たちからは、どんな思いで信仰されていたんでしょうね。ちょっとこのへんの民俗誌も当たってみようかと思いました。

投稿: lotus62 | 2011年11月 4日 (金) 10時48分

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