« 暗渠ハンター理論編Ⅱ その流れ、「動脈」?「静脈」? | トップページ | 暗渠ハンター理論編Ⅳ 暗渠の遷移を記述する »

暗渠ハンター理論編Ⅲ 暗渠・川跡のスタティックな分類

今回は連載中の「谷戸川」の記事の予定でしたが、
やっぱしこの理論編を続けます。次回こそ「谷戸川」記事を挟むつもりです。

前々回は、「0 はじめに」で全体の意図を簡単にお話し、
「1 暗渠・川跡の分類 ①横軸「加工度」」
暗渠や川跡の手の加えられようによってそれを
レベル0~4に分類しました。
そして前回は
「1 暗渠・川跡の分類 ②縦軸「もともとの状態」」
として、もうひとつの軸として元来はその水路が自然にできたものなのか人工的なものなのか、
それを「静脈系」か「動脈系」かに大きく分けて、その中間的なものも含めての分類を試みました。
今回は、その2軸を縦横に組み合わせるとなにが見えてくるか、ということをお話します。
なお、②でセットした縦軸は、あくまで「地点地点の暗渠・川跡を切り取って眺める」
ことに対してしか機能しないので、
このあとは違った縦軸をもうひとつ提示することで「川の全体像を眺める」ことも試みてみます。
では、行ってみましょう。

1 暗渠・川跡の分類
③ 加工度×もともとの状態 で物件をとらえてみる

では、①の「加工度」と(下図に再掲)、

Photo

②「暗渠・川跡のもともとの状態」(下図に再掲)を、
Photo_3

二つを掛け合わせてみましょう。
そのマトリクスはまずはおおまかに、こんな絵柄になります。
Photo_4

この平面に、いろいろな事例をまずぶっこんでみます。
Photo_5

さあてではでは、左上の象限から事例をご説明して行きましょう。

事例1:空川(東大駒場キャンパスから流れる上流箇所)
Nec_0421_2

ここはもちろん自然にできた、湧水からの流れです。
だから縦軸ではかなり上のほう。
そして、ごらんのとおりほとんど護岸加工も控えめに
清らかな流れをあらわにしています。文句なしで横軸はレベル0ですね。

事例2:目黒川
Nec_0433

写真は北沢川と烏山川が合流した後の、246を少々過ぎたあたりの目黒川。
基本的には自然河川です。
が、合流式下水道との接続により大雨時は「自然流下式排水路」ともなるので、
事例1の空川よりちょっと下に。
また、見た目はドボク度たっぷりのしっかりした護岸にかこまれた開渠となっています。
なのでこれは横軸レベル1。
(実際にこの表面的な流れとは別に下水道幹線が地下に通されていますが、
その解釈については後ほど触れさせていただきます)

続いて右上の象限。
事例3:広尾商店街北の水路
Photo

前回述べたとおり、おそらくここは純粋な意味での自然河川ではなく、
また明らかな灌漑用の導水でもなく、
生活排水を起点とした「自然に排水をするための」水路。
従って縦位置は上半分ではあるが真ん中寄り。
そして現状を見れば、蓋かけではなく
地中に管が埋められてしまっているため横軸はレベル3なのでこの位置に。

事例4:桃園川
Photo_2

写真は中野区近辺の、ご存知桃園川緑道です。
杉並区天沼近辺からの水を水源に
いくつかの支流を集めて神田川に流れる自然河川。
また杉並区を流れるあたりではさかんに田んぼへの水の供給のための
用水路が作られていましたが、
本線がはっきりしていることと、
あくまでこの写真の地点ではそれらも含めて集めた谷底の流れである、
ととらえて、縦軸の上半分に位置づけます。
そして横軸ですが、
途中上流や支流では蓋暗渠がたくさん見れれるものの、
この地点でいえば派手に作りこんでいる緑道である、
ということからこの位置・レベル4でいってみましょう。

左下の象限に移ります。

事例5:玉川上水の上流
Photo_4

これは羽村取水口からすこし下ったあたり。
加工度は非常に低く、
ちょっと見ればまるで自然河川ですね。
(まあちょっと上流では実際に多摩川という大河川から導水してるわけですから…)
でも明らかな意図を以って人工で作られているから、
縦位置では一番下に位置づけます。

事例6:玉川上水 四谷大木戸からの余水吐
Photo_5

新宿御苑の東にある、昔玉川上水の余水を渋谷川に流した水路跡です。
縦軸の下のほうに位置づけられることは間違いなさそうですが、
用水本流から分かれて「自然流下が始まっている」という理由で
事例5よりは気持ち上にプロットしましょう。
実際この先渋谷川の源流を補っていくことにもなるし…。
また、今は干上がってしまった(そしてたぶん土を被せて谷を埋めている?)とはいえ
川面をなにかで覆い隠そう、という意図は比較的弱そうなので
横軸ではレベル0とレベル1の中間ぐらいにしておきましょう。

そして最後は右下の象限。
事例7:杉並の天保新堀用水
Photo_6

これは善福寺川と桃園川との間に掘られた、田を潤すための用水路です。
当然縦軸では下半分の位置となりますが、
自然河川同志を結んで掘られた、という事情で真ん中に近い位置にしました。
(まあこの事例に限らず、かなり主観も入る分類ですからwww)
そして横軸。蓋暗渠の中でも、その軌跡とカーブ仕上げは
「いい仕事してる」ことで暗渠界では有名なエリアです。
なので、レベル2の中でもぐっと右寄りに位置づけたいものです。

事例8:品川用水
Photo_7

玉川用水と並んで江戸自体からの主要用水の一つですから
文句なく縦位置は一番下。
この地点は目黒区林試の森あたりですが、
品川用水はそのほとんどが道路と同化してしまっています。
だから、横位置はレベル3となります。

というわけで、
いくつか事例を取り上げてマトリクス上にプロットしてみました。
私自身は、
暗渠を観察した時、
その地点地点で記録を取る際に今後使っていきたいと思っています。

事例を集めることで、
前々回に俊六さんがコメントしてくださったように、
どうも●●区はレベル2処理が多いな、とか
用水・上水は場所によらずレベル3が多いぞとか、
なにがしかの傾向が明らかになってくるのかなと思います。
周辺の都市化や自治体の関与と何か関係が現れてくるかもしれません。
また、車止めや銭湯、バスターミナルなど各種アプリケーション
についても特徴的な傾向が出てくるかもしれません。

まだ自分のこれまでのすべての事例のプロットを行っていないので、
残念ながら現時点ではそこまでは言及できません。
今後の私の課題とさせていただきますが、
プロットするまえにいろんな仮説を考えてみるのも楽しいですね。
あとで一度仮説特集もやってみようかな。
関心をお持ちの方で仮説を持ち寄って、
いっしょに討議なんかもしてみたいものですね。
また、それぞれが「私の萌えポイント」エリアをプロットしてみるのも面白いかと。

また、この先このマトリクスへプロットすることを考えていくと、
もうひとつのアイデアが浮かびあがってきます。
「いろんな暗渠・川跡をプロットするのもいいけど、
一つの川跡をいろんな地点でプロットしてみたらどうなるだろう…」

面白そうではありませんか!?
言い換えると、
川跡をスタティックにでなく、ダイナミックな連続体として捉える
ということになるのかもしれません。

というワケで、次回は
一つの川だけ選んで、その川のいろんな地点を
このマトリクスにプロットしていくいと…おお、こんなことが!
っていうお話を、新たな軸の設定とともにご紹介していきます。

ちなみに・・・・・
連載当初はこの一連のマトリクスを
「LAM=ロータス式暗渠マトリクス」と呼んでいましたが、

自分の名前を織込むという売名行為wの浅ましさにあとになって気がつき改名することにしました。
「暗渠を見るときのひとつの見方」という意味で、
ANGLE(アングル)
と呼ぶことにします。これは、
ANkyo General Level Explorer
の略でもあります(ここに並んでる英単語は予告なく変える場合もありますww)。
『この川跡を暗渠ANGLEで見ると、こんなことが言えそうだな…』
とかより多くの方に使っていただけるようになると私は幸せです。

|

« 暗渠ハンター理論編Ⅱ その流れ、「動脈」?「静脈」? | トップページ | 暗渠ハンター理論編Ⅳ 暗渠の遷移を記述する »

2000 暗渠で川跡・地形をピーリング」カテゴリの記事

1001 暗渠・川跡の捉え方「ANGLE」について」カテゴリの記事

コメント

ANGLEですね。なんか国連機関みたいだあ。ついでに辞書でフランス語にしてみると、ENGE(アンジュ la Exploration du Niveau Generale d'Egout)と出た!これで国連方面もだいじょぶ。

このマトリクスだけでも地域性が見えてきますね。
動脈静脈の分け方は、ドブ川方面でも結構考えるヒントになると思いました。
動脈使用前提の上水用河川に下水が混入するときに、川のドブ川化が問題になるんで、東京は品川用水や六郷用水をそうやって捨てていったけど、その構造は荒川や江戸川に拡大されて温存されていると。
人間も動脈は心臓ポンプで動いて静脈は自然流下で動いてるけど、上水もポンプ前提で下水は自然流下だなあとか。
そうすっと下水管のスカムはやっぱコレステロールみたいなものかあとか、ANGLEからはどんどん逸れてしまいますが次回を楽しみにしてます。

投稿: 俊六 | 2011年7月 6日 (水) 10時26分

俊六さん
コメントありがとうございます。
俊六さんのドブ川研究にも共通するところがあるようで、興味深くもうれしくもあります。
ドブ川に当てはめた時の相違点なども結構あるでしょうから、ぜひご指摘いただけるとありがたいです。
それにしてもスカム=コレステロールって置き換えは面白いですね!! 動脈静脈のたとえを採用しておきながらそこまで考えが及びませんでした。

投稿: lotus62 | 2011年7月 6日 (水) 11時54分

いやー、ここ、読みに来てない間になんかすごい理論編が展開している!!w
データが溜まった方ならではですねー。
細かな感想は後で言うとして、まず思ったことは、こういうまとめ方にも個性が出るのだなあ、と当たり前ながら。
わたしはおそらく、「桃園川」という一本の川を知る、というまとめ方をするのだろうな。
早くその域にたどり着きたいものです。
あと中身に関係ないけど、ココログって「ウェブページ」という技も使えるわけですな!
気付かなかった・・・あ~色々やりたいことがある~~~
ではまた。

投稿: nama | 2011年7月 6日 (水) 20時54分

namaさん
ブログ上ではお久しぶりですw
この話も、まだまだ分かりづらいところばかりかと思います。
時間かけて段階的にわかりやすい工夫をしていきたいので、ぜひ「ここよくわからん」というところありましたら教えてくださいね。

さすが桃園マスター、桃園川に対する愛着&執着が並々なりませんねw
「ウェブページ」もね、最近知りました。
でも「ブログページ」とどう使い分けたらどう便利なのか、私解ってませんw
あとでこの技の意味教えてください。

投稿: lotus62 | 2011年7月 7日 (木) 10時46分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 暗渠ハンター理論編Ⅲ 暗渠・川跡のスタティックな分類:

« 暗渠ハンター理論編Ⅱ その流れ、「動脈」?「静脈」? | トップページ | 暗渠ハンター理論編Ⅳ 暗渠の遷移を記述する »