« 暗渠ハンター理論編Ⅰ ロータス式の「暗渠マトリクス」を作ってみた | トップページ | 暗渠ハンター理論編Ⅲ 暗渠・川跡のスタティックな分類 »

暗渠ハンター理論編Ⅱ その流れ、「動脈」?「静脈」?

前回は、「0 はじめに」で全体の意図を簡単にお話し、
「1 暗渠・川跡の分類 ①横軸「加工度」」
暗渠や川跡の手の加えられようによってそれを
レベル0~4に分類し、
それぞれのレベルについての定義の説明や考察を加えました。

今回はその続きをお話していきます。

1 暗渠・川跡の分類
 ②縦軸「もともとの状態」

横軸の加工度に対して、
縦軸として「もともとの状態」をプロットできるようにしてみます。

それがこちら。

Photo_2

ではご説明していきます。
当たり前ですが、川(水路)はそれぞれの距離を流れています。
ですので、同じ川であっても場所場所によって状態は違いますよね。
上流では開渠だったけど、途中で蓋暗渠になってるよ、とか。
まずこの縦軸で提案する分類は、あくまで「流れの中の、ある一つの地点」
でどういう状態なってるか、ということを捉えるのが目的です。
いわば「ある地点でのスタティックな状態」を切り取って眺めてみる、
ということです。
(上流から下流までの状態を眺めるためのマトリクスは、
新たな縦軸を使って後の章でご紹介します)

ここでは、軸の両極に
「静脈系」「動脈系」というワードを設定しました。

尾根を流して水を引く上水・用水を「動脈」に、
尾根や谷戸から高低差を自然流下で水を行き渡らせる自然河川を「静脈」に
例えるという比喩は、
「東京の水2009」のHONDAさんも使われていますし
また都市計画にも詳しい建築史家の陣内秀信氏も
著作(たしか『東京の空間人類学』(筑摩書房, 1985年/ちくま学芸文庫, 1992年)で使われているのでおなじみでしょう。
特に東京では江戸時代以降、
「遠くから高いところに人工的に水を通してきて、
要所要所で低いところに流し込むことで利水エリアを最大化」

してきました。
また元来谷頭などで湧く水からなる自然の河川も、
用水からの落ち水を人為的に流し込むことで
「広範囲の利水システム」の一部となっており、
まさに動脈と静脈がしっかり絡み合って広大な水系を形成していました。

この利水システムの中のどの場にあたるかによって
暗渠・川跡の現れ方も違ってくる、
という仮説を持ち、この軸を採用したわけです。

さてまず「静脈」なのか「動脈」なのかでこの縦軸を
大きく二分します。
すなわち「自然にできた流れ」なのか「人工的に作った流れか」
で分けます。(図の左端)
その上で、それぞれ反対方向にグラデーションが掛かるものを想定し、
図のように大きく4つに分類しています。

まずは最も「静脈」寄りである「自然河川」の状態からご説明します。
目黒川、神田川、桃園川など「谷の底を這うように流れる水路」がこれです。
いわば大静脈ですね。
高いところからの水が集まった(自然流下式の)結果として
流れを作っている水路です。
もちろん、その水の一部に「動脈」、
つまり用水からの落ち水が含まれていても問題ありません。
ただし、その場合は思いっきり軸の上端にプロットする、
というよりは気持ち動脈寄りに位置付けたいところです。
その意味では、大きな流れにはまだならないでしょうが
湧水から流れ出たばかりの水路、すなわち
空川上流の東大駒場キャンパスを流れる川などは
もう超静脈系といっていいでしょう。

次は、上とは逆に最も「動脈」寄りに位置付けられるのが「用水・上水」。
これはもうそのまんま、品川用水玉川上水などの
「尾根を流れる水路」であり、低いところに分岐する前の、
「大動脈」と言えるところです。
この大動脈から別れてすぐの、四谷大木戸・玉川上水余水吐などは
ここに分類しても差し支えないと思います。
ただし思いっきり軸の下端、というよりは
気持ち軸の上に振れるくらいの位置として考えます。

さてこれを両極とした、つまり「大静脈」と「大動脈」の間の
グラデーションエリアについては以下のように分類してみます。

「静脈系でも、ちょっと動脈寄り」には、
「自然流下式を用いる排水路」を位置付けました。
湧水を集めて自然発生的できる流れではなく、
下水道が未整備だったころから
あちこちの生活排水を低いほうに向かって流した結果の
「すこしだけ人工的」な流れをさします。
しかしこれは決して人工的な尾根水路から始まっているわけではありません。
かと言って、谷底まですでに落ちているわけでもない。
例えて言うなら、
広尾商店街の北側にある路地の水路跡(おそらくその後笄川に合流)や、
港区三田3丁目裏路地の水路跡(たぶんその後古川に合流?)などです。
これらは明治以降の古地図を当たっても田畑ではなく
もとから集落やその他の用地であり、
灌漑のために積極的に水路引っ張ってきて辺りを巡らすというよりは
「出てしまう排水をどうにかして流す」ことで出来上がった水路だと
考えられます

最後の「動脈系だけどちょっと静脈寄り」には
「田畑を巡るこまかな農業用水」を位置付けます。
尾根を走る大動脈から分岐し、農地を隈なく潤すために
人工的・計画的につくられた流れです。
しばしば自然河川と並行して何本もの流れをつくったり、
その流れ同士を横につなぐあみだくじのような流れも見られます。
なので、水源は決して尾根からの用水だけでなく、
自然河川や湧水などともところどころで合わさって流れています。
この例としては、杉並の天保新堀用水付近、
品川区の大森川原の支流(仮称)などが挙げられます。

これらの例をさきの縦軸に加えたものがこれ。

2_3 

さて、このあとはこの縦軸を、前回①でみた横軸と組み合わせ
いよいよマトリクス化をしてみましょう。

ただし、次回はシリーズの途中だった「谷戸川」の3回目を
一度だけ挟ませていただく、かもしれません。

7/5付記:いや、やっぱり次回はこの続きを、7/5の22時にアップさせていただくことにします!

|

« 暗渠ハンター理論編Ⅰ ロータス式の「暗渠マトリクス」を作ってみた | トップページ | 暗渠ハンター理論編Ⅲ 暗渠・川跡のスタティックな分類 »

2000 暗渠で川跡・地形をピーリング」カテゴリの記事

1001 暗渠・川跡の捉え方「ANGLE」について」カテゴリの記事

コメント

一連のシリーズ、面白いです。個人的には動脈と静脈の本質的な違いは「水源」にあると考えていて、動脈系は人為な水源なので、止められるとすぐに水が干上がる→埋め立てやすく、水路の痕跡も残りにくい。一方で静脈系はもともとは湧水だったり地形的に集まった雨水が水源なので、暗渠であれ開渠であれ水路として残り、痕跡も多いと。また動脈は地形による親子関係というか入れ子関係があって、尾根筋・分水界を流れる動脈がある一方、谷筋の自然河川=静脈を人工的に複数に分流して動脈と静脈に機能分解した結果の動脈があります(LAMでいう「田を巡る細かな用水)。こちらも並行する複数の暗渠/川跡がある場合に、痕跡が少ない方が動脈系であることが多いように思えます。

投稿: HONDA | 2011年7月 6日 (水) 22時20分

HONDAさん
コメントありがとうございます。
なるほどなぁー。動脈と静脈で違う「痕跡の残り具合」。確かに残りやすいがどうかは水源のあり方に左右されますよね。この視点とっても興味深いです。今後のサンプリングの参考にさせてください。
それと、動脈と静脈の境目のことをいろんなケースで考えていくと面白いですよね、こんな境界状態のところでも、おっしゃるような「分類の決め手」を見つけると、なんだかうれしくなります。これも重要な示唆を頂きました。感謝です。
一人で考えてると、「ここは毛細血管だな」とか余計な比喩をしてますますわかりづらくなったりしますww

投稿: lotus62 | 2011年7月 7日 (木) 11時02分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 暗渠ハンター理論編Ⅱ その流れ、「動脈」?「静脈」?:

« 暗渠ハンター理論編Ⅰ ロータス式の「暗渠マトリクス」を作ってみた | トップページ | 暗渠ハンター理論編Ⅲ 暗渠・川跡のスタティックな分類 »