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暗渠ハンター理論編Ⅳ 暗渠の遷移を記述する

前回までは、「1 暗渠・川跡の分類」という章で、
で横軸に加工度を設定し
で縦軸にもともとの状態を設定、
でこれらを合わせで暗渠・川跡のある地点を切り取って分類する
という方法をご紹介しました。

しかし、これらはあくまで「ある地点のスタティックな見え方・あり方」を記述するだけでした。
今回は新たな章立てをしたうえで、
違った縦軸を設定し
「一つの川の変化のようす」を記述してみようと思います。

2 暗渠・川跡の全体把握
新たなマトリクスとして、
横軸の加工度はそのままに、縦軸を今度は「上流」と「下流」に設定します。

Photo_10 

つまり、縦軸はタイムラインともいうべき意味であり、
上から端を発した川が流れが進むにしたがってどんな見え方の変化をしていくのか、
これを一目瞭然化するためのマトリクス、
ということになります。

この縦軸へのプロット方法は、
必要によって二つを使い分けます。
一つは「絶対距離法。
縦軸の目盛を30㎞なら30㎞と具体的な長さで刻んでプロットしていくやりかた。
これは同じくらいの規模の川二つ以上を並べて比較するのに適しています。

しかし、都内には呑川や神田川のように大静脈をなす川もあれば、
小沢川や松庵川のように
ある川の支流のひとつでありとても短い(けど変化に富んでいる)川も山ほどあります。
そういうときには上のような絶対スケールだと比較しづらい、
または短い川のほうがスペースが小さくて記述しきれない、
といった問題が出てきます。

そこで二つめは「相対距離法」です。
まあ一つの川のプロフィールを作るだけならどっちでもいいんですが、
二つ以上の川を見るときは上記の問題を避けるため、
最上流と最下流をまず上下それぞれのはしっこに位置づけておき、
全体からの比率で適切に上下の間に振り分けておく
「相対距離」によるプロットをします。
通常はこちらをお勧めします。
それに正確な距離って計りづらいでしょうw?
「だいたい何分目でこんな状態だった」くらいの記述で十分だろうと
今のところ私は考えています。

では、「相対距離法」を採用しながら、
さっそくこのマトリクスを実際の川にあてはめてみましょう。

まずは、
事例1:谷戸川です。
この川はつい最近このブログで上流から、
砧公園に入るまでの経路を追ってレポート
しています(未完)。

これを、砧公園に入る前をゴール(最下流)としてそこまでの
状態を追っていきましょう。
Photo_11

まずスタートは最上部。
諸説あるものの現在は環八の西側・成城警察署あたりが水源、と言われています。
しかしこの近辺はまったく道路と同化してしまって
水路は見る影もありません。よってレベル3の横位置となります。
谷戸川は環八を東に渡ると未舗装の水路あとが現れます。
ですのでいきなり加工度は左にググッと寄って、レベル0へ。
(まあ一部は細い舗装道路になりますが、ここでは大まかな傾向を例示するため思い切って割愛w)
再び環八を越えると笠森公園を通るところで
再び道路と同化します。つまりまた右へと振れます。
笠森公園を抜けると小田急線を南に越えるまでが蓋暗渠区間。
レベル2。
※この途中で北からの支流蓋暗渠が合流しますが、このあとも含めて支流の記述は今回は省略します。

そして山野小学校の横から長い区間はしご式開渠が続きます。
ここでレベル1。

この開渠は世田谷通りを越えるまで続き、世田谷通りの先は幅広の蓋暗渠に。
谷戸川は大きくカーブを切った後、横根橋を越えたところで再びはしご式開渠に。
ここから下流はこのマトリクスでは扱いませんが、砧公園に入ったあとは自然豊かな(?)開渠となって岡本静嘉堂での丸子川との合流地点に達します。
これら加工度に合わせてプロットしていくと上図のようなものが描けます。

ずいぶん加工度の遷移が激しく、この左右にぶれるタイムラインを見ても
谷戸川が「ダイナミックな変化にとんだ川」であることがわかります。

事例2:目黒川
次は、目黒川をプロットしてみましょう。
今回は上流となる北沢川、烏山川は置いといて、
「目黒川」という名前になる両社の合流点、池尻付近をスタートにします。
※前の事例同様、単純化するため支流もあえてプロットしません。

Photo_12

合流点から246と越えるまでは、世田谷区のお家芸、
「過剰なまでに作りこんだ緑道」が続きます。
しかも落合処理場から導水する「フェイクせせらぎ」まで設置してあるという
ご丁寧さなので、これはもう横軸は完全に右に振り切っています。
246を越えると切り立った護岸とともに水面があらわになり、開渠となります。
従って左に移動しレベル1。
但し、このような都市の大河川は大概その地下や横に大きな下水道幹線が
別に作られており、この目黒川の水面もレベル0で見られる
「ほんとうの水面」ではありません。
※7/7訂正:大型開渠の地下には下水道幹線はほとんどありません。「横」にはあります。三土さん、ご指摘どうもありがとうございました!
よって、このような場所をレベル0とするか、
「本当の水面を隠している、相当作りこんだ川」だと捉えレベル4に位置づけるかは
判断の分かれ目です。
厳密に言えばレベル4と呼ぶほうがいいのでしょうが、ここまで流れが立派になり、
また大雨の時は自然流下で
たくさんの雨水がこの谷底の川に集まってくることを考えると、
これは「手を加えられているが新たな川としての人生(?)が始まっている」
と言っていいのではないか、実際見てくれはもうほとんど川だし。
という理由でレベル0とここでは位置づけます。
あ、ちょっと情緒的すぎますかねw
そのあと目黒川は東京湾に流れ込むまでずうっとこのよう状態が続いていきます。
タイムラインを見てみると、事例1に比べて非常に安定的です。
東京の「大河川」の特に下流では、
おそらくほとんどがこのような安定的なタイムラインを示すものと思います。
もうこれらは単なる河川ではなく、
「安定した機能を求められる災害対策システム」の一部にされているからです。

事例3:呑川
呑川も、下流の構造や役割は事例2の目黒川に似ています。
が、ここでは「支流も一緒に書き込むとどうなるか」
という事例としてこの川を挙げてみたいと思います。
支流はたくさんあるのですが、
とりあえず上流をなす&距離が長くてはっきりしている
「深沢支流」(緑色)、
「柿の木坂支流」(柿色)、
「駒沢支流」(桃色)
そして「九品仏川」(水色)
をプロットしてみましょう。

Photo_13
はじめの3つは水源そのものはほとんど道と同化していて
横軸はレベル3からの出発になります。
3つはそれぞれすぐに緑道となり、呑川に合流。
いっぽう九品仏川は、
目黒通りの北、ドンキホーテあたりのはしご式開渠が
最上流として確認できたあとは一端道路に紛れ、
猫じゃらし公園で自然に近い流れを見せた後
細い緑道となったり自由が丘マリクレール通りとなったりして
呑川に合流していきます。
(詳細に地点地点を見ればもっと詳細に遷移していると思いますが)
しかしこれらが合流したあとの呑川本体は、目黒川と似たカーブを描いていきます。

この事例で問題にしたかったのは、このように
・その気になれば支流をたくさんプロットできる
・しかしやりすぎるとよくわからなくなるリスクもある

ということですw

なので、今後このタイムラインのマトリクスを使うときには
支流は支流で一本に的を絞ってプロットしたほうが、
「その川の状態遷移がわかりやすくなる」のかもしれません。
まあ目的によりけり、ではありますが。

今回のマトリクスのいいところのひとつは、
「他の川の遷移と比べられる」ことです。(いちばん下の図のように)
このときにあまりに支流をコミコミで書き込んでしまうと
ワケがわからなくなってしまいますね。
それと、一つの川の遷移も詳細に追いすぎると、これまたよくわからなくなります。
なので、このような比較に使う場合はある程度割り切っておおざっぱに
(必要ない支流はバッサリ切る&細かい状態遷移もバッサリ切る)
捉えることが必要になるでしょう。
…ある種のガサツさがね、重要になります。

事例Ⅹ:エクセルを使った記述
とはいえ、もちろん「一つの川・支流をとことん突き詰めたい」
という場合には、こと細かに状態遷移を書き込んで思う存分
くねくねさせることが必要になってきます。
ちなみにこういう場合は、エクセルを使ってこんな表を作成し、
Photo_14

表が出来上がったら「散布図」でグラフ化すると
一気に詳細なタイムラインが出来上がることになります。
Photo_15
この例では数地点しか書き込んでいませんが、
理論上このたくさん観察して地点のぶんだけ行を増やしていけば、
相当にこまかな状態遷移がタイムラインに現れることになります。
また無限にプロットしていけばそれだけ精緻な曲線が描ける、
ということでもあります。やらないけど。

そして
事例Y:複数の川の比較
記述の応用としてもう一つ。
このマトリクスを使うと、いくつかの川の遷移を比較することができます。
こんなふうに。

Photo_16

同じ川の支流どうしを比べたり、
同じ自治体の遷移の状態を比べたり、
あるいは「暗渠の状態遷移の基本パターン」を見つけたり
同一のマトリクスにのっけることでいろんな比較やパターン発見がしやすくなるはず。

というわけで、これまでシリーズで「暗渠を眺めるひとつの手法」を提案してきました。
ここまでが基本手法です。

いったんここで、「2 暗渠・川跡の全体把握」はじめ
分類に関する基本フォーマットのお話はおしまい。

次回は、これに「アプリケーション」を組み込んで記述する、
という方法論を検討してみようと思います。

ちなみに・・・・・
連載当初はこの一連のマトリクスを
「LAM=ロータス式暗渠マトリクス」と呼んでいましたが、

自分の名前を織込むという売名行為wの浅ましさにあとになって気がつき改名することにしました。
「暗渠を見るときのひとつの見方」という意味で、

ANGLE(アングル)
と呼ぶことにします。これは、
ANkyo General Level Explorer
の略でもあります(ここに並んでる英単語は予告なく変える場合もありますww)。
『この川跡を暗渠ANGLEで見ると、こんなことが言えそうだな…』
とかより多くの方に使っていただけるようになると私は幸せでございます。

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