暗渠ハンター 歌舞伎町の<地形>と街中の弁天様
2011年の1月12日~16日まで、
「歌舞伎町博物館2011」というイベントが文字通り歌舞伎町で
催されていました。
リンク先のHPから趣旨を転載させていただくと、
「本プログラムは、歌舞伎町の新しいまちのイメージを、
地域の事業者・住民・行政の協働により、
形成し発信するコミュニティアート・プロジェクト
「歌舞伎町2020」の一環として、
歌舞伎町における空き店舗活用の最新型として
実施するものです。
歌舞伎町2丁目の空きスペースを、
期間限定のコミュニティの博物館と見立て、
歌舞伎町の江戸から現在に至る生活の様子を収めた、
写真・地図・出版物・映像・音声を展示するとともに、
現在の歌舞伎町のマスメディアに流通していない姿を、
写真・映像・朗読等のさまざまな形態で提示します。
このコンパクトな博物館で共に学ぶことで、
新しい歌舞伎町の姿を発信していきます。
会期中は、
セミナー・ワークショップ・まち歩きツアーなどを実施し、
本スペースを、
市民主導の新しいまちのイメージを醸成し
発信することができる
コミュニケーション空間として活用します。」
というもの。
事前にこの情報をスリバチ学会仲間の山崎さんから
お教えいただき、
1月16日に行われたセミナー、
「歌舞伎町の<地形>」に「暗渠さんぽ」のnamaさんと行ってまいりました。
セミナー講師は、
日本学術振興会 特別研究員<東京大学 工学系研究科>の
松田法子先生。
今回は、まだまだ溜まっているフィールドワークシリーズを
ちょっと休憩してこの内容や
帰り道に歌舞伎町で出会った物件について
レポートします。
さて会場ですが、「セミナー」ということなので
スクール形式に机と椅子が並べられて、みたいなイメージで行ったのですが、
これはいい意味で見事に裏切られましたw
8畳くらいの展示スペースに先生の机が置いてあって、
先生はその上のPCモニタを図示しながら
椅子に座ってお話をする、
我々は先生のすぐ目の前にVの字に並べられた長椅子に腰かけて、
まるで先生の研究室にお邪魔している、
みたいな親密な空気の中でお話を聞くことができました。
タイトルにのカッコつき<地形>でもあらわされている通り、
単純に地形を論ずるのでなくて
歴史、人の記憶、集合的意識、街に顕れるダイナミズム・・・等々
物理的な高低差の地形だけでない<地形読み>がなされているのがミソです。
さてその内容を、ランダムに自分的ポイントだけご紹介します。
(この講演自体が先生の「作品」でしょうから、
著作権配慮の関係上ほんとにポイントだけ)
●歌舞伎町は元沼地。大村家の所有。(淀橋浄水場建設の時に出た)土を盛って学校などが建てられた。
●戦後焼野原になったこの土地を、初代町会長となる鈴木喜兵衛が構想を練って歌舞伎町として再生した。
●再生にあたっては、滞留と回遊を実現させるためわざとT字路を多用した。
●また将来の大手資本による再開発を防ぐため、わざと土地割をこまかーくした。
●横道に逸れるが、ジョアン・グラックという人は「ひとつの町のかたち」という本で、「町を見るときは、構成要素を捉えて静的に見るのではなく、生成変転を肯定し過去からの力のダイナミズムとして見るべき」と述べている。(これは結構共感しました)
●いまでも歌舞伎町に池だったころに祀られた弁天様がある。
などなど・・・。
特にさいごの「今でも弁天様がある」というのは全然知らなかったので、
終了後「どこにあるのでしょう?」と質問させていただきました。
それがね、コマ劇場のすぐそば、なんですって。
おおまかに場所を伺って、
さっそく帰りに山崎さん・namaさんと一緒に寄ってみることにしました。
歌舞伎町どまんなかの弁天様の場所はここ!
より大きな地図で 歌舞伎町のまんなかの弁天様 を表示
※記事を書きあげてよしあとは予約投稿にして公開を待つだけ・・・・。
のはずでしたが、その公開直前になって「アースダイバー」(中沢新一)を
久々にペラペラっとめくってみたら・・・。
「第2章湿った土地と乾いた土地」のところに新宿歌舞伎町の話があって、
この弁天様のことも触れられていました。
「淀橋浄水場の建設で出てきた土を運びこんで、のちの歌舞伎町もともとの湿地や池を埋めた」
「その、最後まで残った池の後にこの弁天様が建てられた」
云々・・・。そっかー全然忘れてた;;;;。
なお、ここでの中沢さんの書き方はこのセミナーで紹介されていた
「街を静的に捉えずにダイナミズムの現れとして捉える」を地で行ってます。
「乾いた土地」(縄文)と「湿った土地」(その後)とのぶつかりあいや変化、
それに加えてエロス(非日常)と日常、などなど力が複雑にからみあうさまを
通してこの章では新宿・四谷を述べています。
改めて読むとおもしろいなあ・・・。
さっそく行ってみると・・・。
あった。ここだ!!
日曜の真昼間から妖しくもきらびやかな店に囲まれ、
ここだけしーんとした風情です。
右隣りと後ろを中層ビルが固め、
「ビルの谷間の谷頭」といった感じのところにある弁天様の社。
社の後ろはもう別のビルなのですが、そのビルの上の方には・・・
なんと鬼瓦。
隣同士でコラボってるんでしょうかw
そして右隣りは「王城ビル」。
またこの王城ビルが古めかしいレンガっぽい作りで、
狙ったのかどうかわかりませんが「史跡感」を醸します。
とは言ってもなー、この社があるビル自体、
横に回るとこんななんですよねー。
カオス。歌舞伎町らしい光景であるといえばそうなんだろうなあ。
さて敷地に入ってみましょう。
手前にあるのはお賽銭箱?
しかしその付近にはこんな注意書きが。
なになに、お賽銭入れるときはこの上の、
柵の向こうの賽銭箱に投げ入れろと・・・。
どうも手前にあるのは賽銭箱ではなかったようですがw
いったいなんだったのかよくわかりませんw
鬼瓦といい賽銭箱といい弁天様といい、
どうもいろんな要素がばらばらに配置されていて、
ここはいわゆる「脱・構築型」の非常に現代的な寺社仏閣スタイルを
体現してる、読むこともできます。
・・・深読みかw
弁天様像とこの池だけが、
「昔ここは池だったんだぜ」と小さな声で主張しています。
それでも、こんなところに痕跡が残っていること自体に
少しだけ感動。
同行の山崎さんはこの後も「歌舞伎町博物館2011」の
「歌舞伎町街歩きツアー」に参加されるとのことで
そそくさと集合場所に向かわれました。
今日は昼からのツアーですが、
先日は「夜の歌舞伎町街歩きツアー」にも参加されて来たそうです。
歌舞伎町の夜と昼を見比べる、というのもなかなか面白そうですねw
ここを後にする直前に気が付きましたが、
おお!池の裏側には、井戸の跡。
きっと池よりも深く掘られ、
そこから地下水を汲み上げては
共同井戸として付近のみなさんのお役に立っていたんだろうなあ。
の前を通りつつ
昔の歌舞伎町(と名のつく前の角筈の一角)に思いをはせ、
新宿駅へと向かうのでした。
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コメント
おつかれっしたー。
あれ、二毛作コメントはナシですかw ちょっと不謹慎でしたでしょうか。。
最近はなにかを食べにしか行きませんが、学生時代は夜中まで遊んでいた街。
この公園だってきっと通過してたのでしょうけど、ほーんと、まるっきり、気づいてませんでした。
この異空間ぶりは、現地の空気でも味わっていただきたい気がします。
投稿: nama | 2011年1月24日 (月) 20時48分
二毛作説・・・忘れてましたよw
このお社と風俗店が一緒のビルだってんで、
「まさか勤務形態が巫女さんとキャバの・・・・」などからずいぶん発展しましたねーw
投稿: lotus62 | 2011年1月24日 (月) 22時36分
弁天様に猫さん居ませんでしたか?お昼だと出てきてないかなぁ。
早朝だと見かけたんですけどねぇ。
関係ない猫話ですみません!
あ、ここ猫を見た弁天様だ。って嬉しくなっちゃったもので…
投稿: ろっち | 2011年1月24日 (月) 23時23分
弁天様の横向い、いまラーメン神座になっているところにあった「名曲喫茶スカラ座」にはよく行ったものです。蔦の絡んだスカラ座の建物と王城ビル(こちらもかつては喫茶だったとか)に挟まれた歌舞伎町のエアスポットみたいな不思議な場所だったのを覚えてます。
投稿: HONDA | 2011年1月25日 (火) 00時00分
■ろっちさん
おっと、ここ猫さんスポットでしたか!
さすが至るところで猫さんと会ってらっしゃいますねー。
猫を見る目が肥えてらっしゃるというか・・・。
この日はちょうど昼頃でしたが、影もカタチも・・・。
こんど近くに行くことがあったら猫じゃらし持参で寄ってみますかねー!
■HONDAさん
「名曲喫茶スカラ座」、名前だけは聞いたことがありましたが、このあたりだったんですね。
そかーこのへんもHONDAさん思い出の場所のひとつだったんですね。
というかHONDAさんよく昔の東京のことご存知ですよねー。
たぶん同年代の方と比べるとそんなにもご存知ではないでしょうし、
やっぱり昔から「風景を見る目」が肥えてらしたんだと思うんです。
投稿: lotus62 | 2011年1月25日 (火) 14時17分